お会いしたい人

工房近くにある空き地は、40年以上手付かずの草ボウボウ地帯である。

春夏秋冬折々の野草が採集でき、私たちにとっては都合の良い恰好の場所だ。

今では珍しいこの都会のオアシスを私たちは勝手に第一農園と呼ばせていただいている。

しかし所有者は150坪以上あるこの土地の固定資産税を、どう考えているのだろうか。通常なら駐車場やレンタルスペースにして、少なくとも税金をまかないその後、集合住宅を建てオナー経営したり、地代の高騰を見定め売却するのが万人の考えだ。

そんな2020年のある日、この土地にマンションが建つことになった。

長年に渡り、慣れ親しんだ農園がついに無くなるショックは大きい。

マンション建設説明会の日、担当者に所有者の話を聞いてみた。

すると彼は先日他界し、ご氏族の判断で売却を決定したらしい。ご氏族もこの土地を父上が保有していたことを知らなかったという。

私はこの所有者が、とてつもない大物に思え、この土地を長年に渡り重宝させてもらった感謝の気持ちを伝えることや、この土地に対する彼の思いを聞きたい気持ちでいっぱいになった。いつかお会いできるといいですね。

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