あるきっかけで試験管やフラスコ、ビーカーを製造する理化学ガラスの町工場に出向いた。それまでは、長い金属のパイプの先に溶けたガラスを巻き付け、空気を吹き込みガラス成型をしたり、溶けたガラスを型に流し込んだりするものだと思い込んでいたが、全く違う製法で成形していることを初めて知り正直ビックリ感動した。
職人さんにいろいろ質問したところ、ガラスにはいろいろな種類があり、並みガラス、理化学耐熱ガラス、アクリルガラス、クリスタルガラスなどそれぞれ製法や特性は異なっているという話を聞いた。
60年生きていても知らぬことだらけだなと生涯学習の尊さを改めて実感した。理化学ガラスの製法は遠心機にガラス管を取り付け職人さんがカーボンでできた型を片手に細いチューブを口に入れ吹いたり吸ったりしながら、ガラス管を膨らましたり、細くしたり目測で形を仕上げる巧みな手造り成形なのだ。さらに耐久性に優れていて熱に強い優れたガラスと知り、私の頭の中はある物語りと共に、この製法でこの世にまだ無いミニ花瓶を作りたい気持ちが抑えられなくなっていた。ダメもとで思い切って若い職人さんに「花が幸せになるミニ花瓶を一緒に作りませんか」と尋ねたところ、「僕も理化学用具以外の何かを作ってみたかったんですよ」と思いがけぬ嬉しい答えが返ってきた。よし決まった、コロナで社会が不安になっている今日この頃、「花はココロとカラダの効能薬」と題し、あえて理化学ガラスを使い花瓶を制作する意義には物語る必然性がある。その後、意気投合した私たちの理化学ガラス花瓶制作は順調に進み、首位主力に走るのではなく「花の為に、そしてそれを楽しむ人の為に」という共通の価値観の元、思いがけぬ彼との尊い出会いで、新たなやりがいと生きがいの引き出しが増えたことに感謝この上ない。