植木屋が大きなケヤキの枝を切り落としていた。
花や植物のデザインをする私にとって切り落とされた枝は、宝物が路面に散乱している光景に見える。
私は思わず植木屋に「この枝いただけますか」と歩み寄った。
「好きなだけ持ってきな、どうせ焼却処分に金がかかるから、ありがたいよ」と強面の表情で言ってくれたので、足早にデザインに使えそうな枝を拾い集め、軽トラの荷台を満杯にした。
「ありがとうございました」とその場を立ち去ろうとした時、棟梁らしき植木屋が「この枝何に使うんだ」と尋ねてきた。
私は自分の職種を話し枝の使い勝手を伝えた。
それを聞いていた植木屋の表情は先ほどは打って変わり笑顔で「そうか!切られたケヤキも幸せだな」と、まるでケヤキの親のような優しい眼で私に返答してきた。その姿は、植物を愛する同志のようにも思えた。