悲しいスイカ

暑い夏の黄昏時、無性にスイカが食べたくなった。

 

そういえば、昔よく行った家の近くにある今は寂れてしまった商店街の片隅の八百屋に美味そうなスイカが並んでいたのを思い出した。

こころときめかせ、久々そこに向かい軒先でスイカをポンポンとたたき品定めしていたその時、「ポンポンたたかなくてもみんな甘いよ」

腰が曲がった店主が歩み寄ってきた。

その一言に、時が流れたことで、活気があった商店街や背筋がピーンとしていた店主そして文化風習まで変わってしまったんだなと少し寂しい気持になった。

 

家に帰り、たたかなくても甘いというスイカが、それほど甘くなかったことが

さらに私の心を寂れさした。

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