犬の散歩に出かけたある日のこと、愛犬ガッツが近所のごみ置き場のごみ袋におしっこをしてしまった。
いけないこととは思いつつその場を離れようとした時、ごみ置き場の向かいのお宅のご主人らしき人が「どこにおしっこをさせているんだ、ふいて綺麗にしておけ」とすごい剣幕で怒鳴りつけてきた。
あまりの罵声に、つい私の心も熱くなりカッと言い返したい気分になったが、冷静に心を静め「すみません。犬には責任はなく私の責任です。後で戻り綺麗にします」と言ってその場を後にした。
バケツとぞうきんを手に即座にごみ置き場に戻り、とことん綺麗にしてやろうと私の勝負が始まった。
一つ一つのごみ袋を必要以上に綺麗にふき、何回か家に戻り新しい水で道路をたわしで洗っていたその時、「もういいよ、そのぐらいで」と先ほどのご主人が声をかけてきた。「いやまだ匂いますからもう少し」と意地になり清掃を続けていたその時、ご主人がまた現れ、私にしわくちゃの紙袋を差し出した。
「これ田舎から送ってきたサツマイモだから持っていきな。こんなに綺麗にしなくても良かったのに」・・・
私の心中「勝ったー」
その数年後、愛犬ガッツは残念なことに他界してしまったが、ご主人と会う度にガッツを思い出し、この出来事がきっかけで今でも彼とは親しく接している。