東京育ちの田舎者

作品集に掲載する白銀の世界での作品制作の為、あえてマイナス20度の日々が続く一番寒い時期をねらい北海道帯広をロケ地に選んだ。

事前準備として極寒の地に対応するべく、防寒ソックス、手袋、頭からすっぽりかぶる帽子などを購入する為、都内のアウトドアショップに出かけた。

寒冷地対応グッツは驚くべき高価であったが、マスト必要と判断し一足二千円以上もする靴下と手袋などを購入した。これで寒さには対応でき快適な作品制作、撮影に臨める安心感に思いのほか高額であった驚きも忘れ、心豊かな気持ちになっていた。

帯広空港に到着した時の気温はマイナス23度で寒いというより、肌が突っ張り痛いという感覚だ。そんな環境の中、町中で見かけた女子高校生の制服姿は、ミニスカートに真っ赤に腫れあがった素足をさらし歩いている。やはり若者にとっては寒さ対策より流行優先なのであろうと万全な寒さ防護服に身を包んでいた自分が臆病者のお上りさんに感じてしまったから可笑しい。

スタッフの一人が「防寒手袋を買いたいので地元のホームセンターに寄っていただけますか」と言い出した。我々は目的地途中にあったホームセンターに立ち寄った。

ここでも仰天した。なんと防寒手袋が三セット八百円で売られているではないか。私はさらに東京から出てきた、無知なお上りさんに感じた学び多き衝撃的なロケの始まりを今でも忘れない。

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