拝啓
私に遊ばれた植物の皆様、天国で健やかにお過ごしでしょうか。
小さい頃、あなた達に残酷な行為を沢山やって参りました。
花びらをむしったり、実の表皮をつまみ種を飛ばしたり、葉っぱに穴をあけお面にしたり、松葉同士をひっかけて引っ張り割いたり、それはそれは今思うと標的になった植物の皆様に大変申し訳なく思う次第です。
しかしまだ残酷という概念が無く、むやみに楽しくやっていたあの頃の行為は決して無駄ではなく、大人になり道徳と秩序を得た私に本当の残酷さの意味や命の尊さ、観察する大切さ、想像する楽しさ、表現する達成感を教えてくれたような気がいたします。
今でも、わたくしの創作表現の中に植物の皆様を分解する手法がございます。
ただ、あの頃の楽しいという感情だけとは違い、あなた方が自然界では決して表現できぬ美しさを探し求め、責任をもって表現させていただいております。
なにとぞご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
あなた達は私の人生教育の恩師です。このご恩を決して忘れず、これからも私の創作活動に役立て情操発信して参る所存です。
また皆様にお会いできる日を楽しみにしております。
敬具
川崎景太