父の声。

人生において、出会いや別れはつきものである。私は早くして父親を亡くした。
経済成長時代の真っ只中で父は仕事が忙しく、家ではほとんど会うことも会話もなく過ごしていた。それでもたまに時間ができると仲間たちを集めて夢を語ることが好きで、若者には人気もあり理解のある人だった。そのような姿を、私は反抗期だったこともありあまり好意的には思えず、争いが絶えなかったことを思い出す。

ある日、父は突然この世を去った。幼少期を除き、私からは父との接点を設けることもなく、親孝行もできなかった。もっと真剣に向き合い、いろいろ語り合っておけばよかったと後悔が先立つ。これも私が二児の父になり、痛いほど親の気持ちがわかるようになったこともあるのであろう。

今は彼とより近い関係にあるような気がする。
私が何かに迷った時、空を仰いで父に尋ねるとーーー右に行け左に行けと、声が聞こえる。

”私にとってあなたの存在は今でも大きいです。おやじ、ありがとう。出会えて本当によかった。”

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