作品集 HANA GRAPHIC ART
作品集 HANA GRAPHIC ART
序言──花の二次元アート
私はこれまで40年にわたって、花や植物を素材にした創作活動を仕事にしてきた。そして、そこから私なりにさまざまな気づきを得てきたつもりだが、彼らに関してはいまだにわからぬことばかりだとつくづく思う。ただ、彼らが、多彩な色、摩訶不思議な形状、豊かな香りといった才能を私たちに分け与えてくれる優れた“いきもの”であるということだけは確信できた。その才能を借り、この世にいくばくかのポジティブな影響を与え残すこと、それが私の目指す花文化なのだ。
活けた花の美しさや表情は、鑑賞する人々の心に残るかもしれないが、限られた命であるだけに、作品を残すことはできない。「枯れるから美しい」──それが自然の理であり、真理であるとわかっていても、リアルな花の作品を通じて、後世の人々と感動を分かち合えない一抹の虚しさを私は感じ、そのことが「花のメッセンジャー」として花文化の創造を続けてきた私の悩みでもあった。
この本で紹介する「HANA GRAPHIC ART」は、私が考案した独自の花技法である。
いきものである以上、花は立体的に存在し、その花を組み合わせた作品を実際に鑑賞するとき、花は持ち前の才能を発揮し、感動をもたらしてくれる。しかし、花の命はあまりにも短い。克服するために取った手法が、花の作品をフラットな二次元世界として表現することだった。「命を宿したリアルな花の魅力を最大限引き出し、平面に息づく花として表現することはできないか?」という思いは「HANA GRAPHIC ART」によって実現することができたように思う。立体的なフラワーデザイン作品を単に撮影して、二次元世界に押し込めるのではなく、作品そのものを二次元的に構成する絵画的な美をもつ世界観。花どうしがハーモニーを奏でる「一瞬の美」を、抽象絵画のような画面のなかに、時を超えて半永久的に封じ込めた花アートが「HANA GRAPHIC ART」なのだ。
本書で紹介する「HANA GRAPHIC ART」を通じて、花の魅力を思いのままに想像し楽しんでいただけたら、これにまさる喜びはない。
フラワーアーティスト 川崎景太
(2024年7月発刊)