あの日のハコベラ。

私が初めて関心を持った植物は、大切に育てていた鶏に餌として与えていたハコベラである。毎朝、路地裏に咲くハコベラを探し採集することが日課であった。幼いながらにも鶏が好んで食べる美味しそうなこの植物の色や形、そしてほのかにただよう青臭い香りを求めてひたすら歩いたものだ。

そして今、違った目的意識を持って植物や自然を求めている自分がいる。

ふと路地のハコベラに目を向けると、ハコベラは幼い頃見たそのままの姿で今もたくましく生き続けている。しかし、花市場や花屋に並ぶ多くの植物は、茎が真っすぐで葉のばらつきもなく、みんな同じに見えてしまう。もちろん花を生産出荷するにあたって、いろいろな問題や条件があるのだろうが、植物が本来持っている姿やかたちの魅力に注目してみてはいかがなものか。自然植物採集がなかなか出来ない時代だからこそ、今後の花生さんのあり方に変革をとー生け手の立場で望むのは無理なことだろうか。

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